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その4:諸々のアレは今はどうなっているのか

(1) MIDIシーケンサー(ハードウェア)はどうなった?

この記事をご覧いただいている方の多くはパソコン+MIDIシーケンスソフトのユーザーだったと思われるため、ハードウェアのMIDIシーケンサーにはあまり馴染みがないかもしれません。
でもMIDIシーケンサー単体機からパソコン+MIDIシーケンスソフトに移行した人もいるでしょうから単体機にも触れておきます。
90年代にはまだRoland MC-50などが販売されていたようです。でも、これらハードウェア単体のMIDIシーケンサーは今はもうないといって良いかと思います。
実は現在もRoland MCシリーズはありますが、純粋なMIDIシーケンサーとは少々意味合いが異なります。

画像:Roland MC-80 1999年発売。このあたりが最後か...


(2) MIDIシーケンスソフトはどうなった?

いにしえの4大シーケンスソフト以外で生き残っているものも多くはオーディオ機能を取り込んで DAW 化しています。
今、純粋なMIDIシーケンスソフトと言えるのは2007年に産声を上げたDomino というフリーのソフトくらいだと思います。

http://takabosoft.com/domino

(3) Sound CanvasシリーズなどのDTM用MIDI音源モジュールはどうなった?

MP3の登場とネット回線の高速化に伴い、スタンダードMIDIファイル(MIDIファイル、SMF)を音楽作品配布メディアとする文化がほぼなくなりました。
GM, GS, XGなどのMIDI音源モジュールのニーズもなくなり、メーカーもその製品ラインアップから落としてしまいました。
なお、Roland Sound Canvasシリーズについてはソフト化されています。詳しくはRolandのサイトにて"Sound Canvas"でググると情報が見つかると思います。

画像:ソフトウェア化されたSound Canvas


(4) シンセサイザーはどうなった?

現在のシンセの主流はソフトウェア・シンセサイザーと言っても良いかもしれません。でも、電子楽器としてのシンセサイザーは健在です。
一時メーカーに元気がない(新しいキーボードが発売されない)時期がありましたが、現在はそれなりに新製品がリリースされています。ただし、ラックタイプの音源モジュールはRolandのIntegra7くらいしかありません。
昔との大きな違いはほとんどのシンセがUSB端子でMIDI情報の送受信を可能にしている点でしょうか。このため、MIDIインタフェースを用意しなくてもシンセをパソコンに接続できるものが多くなっています。

画像:MIDI端子とUSB端子の両方を装備するシンセサイザーの例(KORG micro X)


(5) サンプラーはどうなった?

サンプラーの主流もソフトウェアと言っても良いと思います。そんな中でサンプラーはなかなか元気です。他者の音楽作品をサンプリングして自身の楽曲内で使うムーブメントがあるからです。
いろいろな機種が販売されていますが、昔のRoland SシリーズやAKAI professional Sシリーズのようなラックマウントタイプのものは無いようです。
現在も AKAI professional はありますが、これは昔の赤井電機系列のそれとは違います。昔の AKAI professional は潰れてしまい、現在はアメリカの音響機器メーカーがブランド名を引き継いで、昔のデザインを継承した商品を製造しています。
ちなみに Ensoniq, E-mu も今はもうありません。

画像:新旧AKAI professional ロゴ。左が旧、右が新


(6) MIDIインタフェースはどうなった?

MIDIインタフェースは今も健在です。 ただし、シンセやサンプラーのソフトウェア化によって物理的なケーブル接続が不要になり、また、シンセ側にUSB端子が備わっているためにパソコンとの直結が可能になった為かMIDIインタフェースのニーズが減りました。
そういったことから、特にマルチポートのMIDIインタフェースの製品ラインナップは非常に少なくなっています(最近少し増えてきた感もありますが...)。

画像:これは今もあります(MOTU / MIDI Express 128)。"MOTU"は"モツ"と呼ばれています


(7) マルチトラックレコーダー(MTR)はどうなった?

ビデオテープを使う8トラックのデジタルMTRであるALESIS社のADATが発売されたり、ハードディスクを使うラックマウント型のMTRが出始めたのが90年代ということになるでしょうか。
現在残っているMTRはミキサーと一体となったものがほとんどでしょうか。大きさは昔のカセットテープを使うMTRのような小さなものから、少し大きめのミキサーと一体になったものなどがあります。 記録メディアはSDカードなどのメモリーカードを使うものが多いようです。

画像:左 TASCAM / DP-008EX、右 TASCAM / DP-24SD


(8) エフェクターやミキサーはどうなった?

今販売されているエフェクターは安価なものと高価なものの両極端です。DAWのユーザーはそれ自身に附属するソフトウェア化されたエフェクター(プラグイン)やサードパーティ製のプラグイン・エフェクターを使うのが主流です。 そんな事情のためか、DAWユーザーでない人が気軽に使う安価なもの、レコーディングスタジオに常備されているようなビンテージ機器のような高価なエフェクター、その中間をプラグイン・エフェクターが埋めるといった感じでしょうか。

ミキサーは今もかなりの機種が売られています。昔に比べれば随分と安くなったものです。機能的にはデジタル・エフェクターやオーディオインタフェースを内蔵したものが多くなっています。 また一部には外見はどう見てもミキサーなのに実はMTRも内蔵しているようなものも出てきています。
ただ、録音からミックスダウンまでがDAWの中で完結してしまう今日では、ミキサーは必須の機器ではなくなっています。むしろ、昔購入したキーボードや録音機器をいまだに大量に使っている人のための特殊な機器というふうに思われている感があります。

画像:この立派な見かけで \99,800、しかもMTR機能付き、TASCAM / Model 24


(9) マスターレコーダーはどうなった?

90年代のマスターレコーダーの主流は DAT だったと思います。もちろんもうありません。
現在はDAWまたは波形編集ソフトで書き出した(レンダリングした)オーディオファイル(wavファイルなど)をそのままパソコンの内蔵ストレージやなんらかの記録メディアに保管するのが主流だと思います。


(10) スタンダードMIDIファイルを配布する文化はどうなった?
ーMIDIファイルを作成、配布する文化はどうなったかー

Sound Canvasのところで触れたように、先にMP3の登場とネット回線の高速化に伴い、スタンダードMIDIファイル(MIDIファイル、SMF)を音楽作品配布メディアとする文化がほぼなくなりました。
音楽作品の作り手としても、もともとはMIDIファイルでの作品配布などしたくはなかったわですから当然の流れではあります。
ただ、他人が作成した既成曲のMIDIファイルを独自に編集して楽しんでいた人にとってはいささかさみしい時代になったと言えるのかもしれません。



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〔2021.3.6 新規掲載、2021.3.6 最終更新〕